大麻OK? オランダのリアルなソフトドラッグ事情
かの有名な俳優ピエール瀧氏が、コカインを使用したとして逮捕された。
このニュースを機に、ソフトドラックの人体への影響や効力についての話題で、私のTwitterのタイムライン界隈が盛り上がっている。
そこには、アルコールやタバコの人体への影響と比較しつつ、
「ソフトドラッグ意外に大丈夫なんじゃないか(むしろアルコールやタバコの方が危険じゃないのか)」と主張する、ソフトドラック容認派が意外にも多い。
そしてその多くが使うプラスアルファの言説が、「ソフトドラック、特にマリファナは世界中で合法化されいるし、日本でも流通させてみたらいいのに」こんな感じである。
でも、一体そのうちの何人が世界の国々のソフトドラッグ事情について知っているのだろうか。所詮、情報をかじっているにしても、(どうせ)アメリカかカナダのマリファナ事情ぐらいだろう。(えっへんw
しかし。
もっと大昔からソフトドラッグが流通している国が、ある。
それは....
オランダ。
もはや、ソフトドラッグの聖地といっても過言ではないだろう()。
ということで、今日はオランダのソフトドラック事情について詳しく説明していくことにする。
複雑怪奇なオランダのソフトドラックに関する法律
上記で、
「ソフトドラッグが合法化されている国=オランダ」ではなく、
「ソフトドラッグが流通している国=オランダ」という表現にしたのには、
理由がある。
何故ならば、厳密に言えば、「オランダではソフトドラックの娯楽での使用は合法ではない」とされているからである。
....はぁ??
いや、アムステルダム行ってみ、どれだけCoffeeshop(コーヒー売ってるお店ではなく、マリファナが売られている店)があって、どれだけマリファナの模様のシャツとかキーホルダー売ってると思ってんねん!
合法じゃなかったらそんなオープンにできひんやろ!
てか、アムステルダムってマリファナの聖地じゃないん!?????
そうツッコミたくなる人もいるだろう。
私も例外ではない。
ここで大事なのは、
「合法ではないソフトドラッグをする=罰せられる」
ということではない、ということを理解することである。
なかなか周りくどい言い方になってしまったのでもう一度端的に言い換えると、
「ソフトドラッグは合法ではないが、やったからといって罰せられない」
そのような非常に微妙なニュアンスの法律(いや、国の政策というべきか?)が存在しているのである。
ただ、まぁ罰せられないのなら、ぶっちゃけやるよね???
みたいな感じで、ソフトドラッグが実質OKになってしまっているのである。
なぜオランダのソフトドラッグに関する法律は曖昧なのか
まず「合法」とはっきり定めなかったのは、ヨーロッパ諸国からの批判があったからと考えられる。
時は20世紀後半、ヨーロッパがさらに保守的だった時代である。害悪とされてきたソフトドラッグを、先駆けて完全に容認することはなかなか難しい。
ただ、ソフトドラッグの使用について寛容であることへの利点は理由はいくつかある。だから非常に寛容な政策が取られた。
では、その具体的な利点とは?
一つ目は、
ソフトドラッグの使用に対して大目に見ることが、ハードドラッグの抑止に繋がる、というもの。「ソフトドラッグをやっちゃったらハードドラッグにも手を出しちゃうんじゃないか」、そういうイメージを持ちがちな私(たち)に取ってはなかなか理解できないが、そういうものらしい。
確かに、ヨーロッパとトルコにおける国ごとのドラック事情についてわかりやすくまとめられているこちらのWebサイト
http://www.emcdda.europa.eu/countries/drug-reports/2018/netherlands_en
からも、オランダのヘロイン(ハードドラック、人体の影響と依存度が半端ないことで知られているドラッグ)の使用状況は他の国々と比べてもかなり低めだと読み取れる。これは、上記の「抑止としてのソフトドラッグ」政策が功を奏している理由の一つなのではないのだろうか。
二つ目は、
これはあくまで私の推測に過ぎないが、オランダ政府もソフトドラッグ市場の経済効果を無視できない、というもの。
ソフトドラッグ売買関連の税金も、ソフトドラッグの聖地というブランドに惹かれてやってくる観光客の数も無視できない。
こんな素晴らしい収入源を捨てては勿体無い、そんな政府の思惑があるはずである。
ちなみに、大麻取締法によると、日本人による海外でのマリファナ使用は、
日本の法律の処罰の対象である。インターネットでの調査に加え、法律系の国家試験を控えている友人にも確認を取ったので間違いではないはずである。
オランダのリアルなソフトドラッグ事情
さて、長々とオランダのリーガル面でのソフトドラッグ使用について説明してきたが、
そろそろ、実際に「普通の人」もソフトドラッグ(というかマリファナ)を使うのか気になってきた人もいるのではないだろうか。
ということで、ほんの少しだけ、リアルな実情の片鱗をQ&A形式で述べてみたいと思う。
Q. オランダで一番人気なソフトドラッグは?
A. マリファナ。人気というか、そもそもほぼマリファナの一本勝ちである。
他のドラッグを使用している人は、あまり聞いたことがない。マジックトリュフはアムステルダムで売られているのを見るが、より観光客向けな気がする。
Q. どんな場面でマリファナは吸われるのか、どんな人が吸うのか?
A. いろんな場面で。
外で休憩中や、歩きながら、パーティーなど、いろんな場面で吸われるし、いろんな人が吸っている。そこまで特別なものでもないらしい。あまりにもナチュラルに吸っているのを見て、マリファナがどんな見た目をしているのかオランダに来た当初知らなかった私は、マリファナを吸っている人を見て、ちょっと違う形状のタバコを吸っているのだと勘違いしていた。日常的に吸う人もいれば、たまに吸う人もいる。多種多様である。
また、決して皆が吸っている訳ではない(吸っている人が目立つだけ、よくあること)が、パリピだけのものでもない。日本の最近の若いコたちがタバコを吸うレベルのもの、というべきか。見た限り、オランダ人よりもオランダ人以外のヨーロッパの子たちが吸っている印象が強い。私が見えていないだけかもしれないが。
Q. マリファナは、どこで買うことができるの?
A. Coffeeshop. マリファナが売買されている店のことをこう呼ぶ。
オランダ以外の国だと、コーヒーを飲む場所すなわちカフェ、の意味なので注意してもらいたい。
そんなCoffeeshop、アムステルダムほどではないが、私が住む街にもいくつかある。ちなみに、決まった曜日にはStudent discountがある店も多いときく。どうやら、学生もターゲティングされているようだ。
Q. マリファナについて、どう思うか?
A. 来た頃は、吸っている人を見て怖いという印象を持っていた。独特な甘ったるいような酸っぱいような匂いにも不快感を感じていた。しかし、慣れとは怖いもので、マリファナを吸っている人を見ても何も思わなくなった。自転車で街を疾走している時にマリファナの匂いに気づいても、特別気にならなくなった。今では、個人的にはタバコの方が嫌な匂いだと思っている。
オランダのソフトドラッグに関する政策と現実を見て、
日本の未来に思うこと
なんだか大層な小見出しになってしまったが、ソフトドラッグが「受け入れられている」社会に生きていく中で、日本がこれからドラッグとどう向き合っていくべきなのか、考えることはなくもない。
そして私が導き出したのは、
「日本が娯楽目的のソフトドラッグの使用を合法化あるいは容認するのは、まだ早いのではないか」
ということ。
もちろんこの考えを誰かに押し付ける気は毛頭ない。
ただ、依存度が少ないとされているマリファナでも、依存する人はゼロではないだろう。禁大麻外来(?)などの医療面での設備はまだ全く整っていないし、それらの設備投資ができるほど、日本政府にはお金があるのだろうか。ソフトドラッグに関する教育は、一体誰が、どのようにして行うのだろうか。性教育、歴史や人道的な問題でさえまともにできていない教育現場が、ソフトドラッグに対してきちんとした教育をできるのか。ソフトドラッグについても、「寝た子を起こすな」理論が使われてしまうのではないのだろうか。
ソフトドラッグ容認派は私の周りだけに多く、一般的な主張ではそもそもないのかもしれないが、とりあえずここでは、まだ今の段階では日本はソフトドラッグを使用を容認すべきではないという私の主張を強調しておく。
長文になってしまったが、今日はここまでにしたいと思う。
正直二つ目以降のパートについては、書くかどうか非常に迷った。
オランダが、日本では禁じられているソフトドラッグが簡単に手に入る社会だという話をすることで、「オランダ怖い」「(特に子供に)オランダに行かせたくない」と思って欲しくないからである。
でもせっかくこの折に、オランダに住んでいるからこそ書ける事情を書いてみたい、そんな欲が勝ってしまった。このブログは、そんな私の欲の産物である。
最後に、こちらに、参考にしたウェブサイトを貼っておくので参考にどうぞ。
https://www.government.nl/topics/drugs/toleration-policy-regarding-soft-drugs-and-coffee-shops
もし何か質問等あれば、ぜひ聞いてください。
ではでは。
2019年3月27日 10:10am ハーグのアパートメントから